【実施概要】
本フォーラムは10月16日(日)全国からESDにつながる活動の実践者やESD推進者が直接出会い、学びあう場として開催されました。ESDについて既知の方から、このフォーラムを通じて初めて知った方まで、幅広い参加者が約5時間ESDについて見聞・討論する機会を得ました。
<当日のプログラム>
■ご挨拶
環境省総合環境政策局長 白石 順一氏
■第一部 フリップボードセッション「各プロジェクトの魅力や強みを共有しよう」

コーディネーター:杦本育生氏(NPO法人環境市民・代表理事)
【ESD実践発表者】
気仙沼市教育委員会:白幡勝美氏
大阪府立西淀川高等学校:辻幸二郎氏
河川環境楽園・自然発見館:河野恵子氏
NPO法人地域の未来・志援センター:駒宮博男氏
山村塾:小森耕太氏
岡山市環境局:内藤元久氏
■第二部 分科会「『ESD』で魅力や強みをプラスしよう」
- 第1分科会:学校をベースとしたESD
- 第2分科会:地域をベースとしたESD
- 第3分科会:ESDを支援する取り組み
■第三部 全体会(各分科会の報告)「『ESD』の魅力や強みを確認しよう」

【実施報告】
第一部 フリップボードセッション「各プロジェクトの魅力や強みを共有しよう」
全国にはESDと名乗っていなくても、ESDを実践されている方がたくさんいます。今回のフォーラムでは、「ESDらしさ」とは、「ESD的」ということはどういうことなのかを共有する時間となりました。
第一部ではコーディネーターの杦本さんの司会進行のもと、6名のESD実践者の方から活動のポイントや魅力、ESDとしての特徴、これからの課題を順番にフリップボードに書き出して頂きました。それぞれがどのようなESDらしさを掴んでいるのか、見ていきたいと思います。(*はESDとしての特徴に書かれたキーワード)
<白幡勝美さん:気仙沼市教育委員会 教育長>
気仙沼では、学校中心でESDを展開しています。学校は活動を継続していくことが困難であるという弱さがありますが、その弱さを克服するために「地域と大学の連携」に取り組んでいます。想いを持った数名の活動が地域の活動となり、何十年も続けば新しい文化になります。地域の人たちがその活動を地域の財産として、喜びをもって受け止めていくのではないでしょうか。
*自分の意見を持たせる・持つ
ESDを通して、子どもたちが実際に行動や活動ができるようになるために、自分たちが自分の意見を持てるようにする指導をしています。これがESDらしさです。
また震災・復興基本計画の中で「海と生きる」ことをテーマにしています。私たちは自然との付き合い方を海から学び、それが文化となっている。そうしたことを受けとめながら、畏敬の念を持って海と生きていきたい。これもESDの一つだと思います。
<辻幸二郎さん:大阪府立西淀川高等学校 教諭>
公害学習を地域の歴史として学んでいくことを軸に環境教育を行っています。公害学習は、実際に喘息を持つ子もいるので、自分事としてどうしたらいいのかという視点から、地域のおっちゃんやおばちゃんが公害裁判で闘ってきたお話を聞き、思いをつなげています。また菜の花を育てバイオ燃料をつくる「菜の花プロジェクト」では、学校以外の場所でも様々な主体と一緒に行っています。これらの取り組みにより生徒たちの自尊感情を高め、やさしい心を育むことができています。
*再生
毎年12月に語り部に来て頂き、公害病になったことや裁判のことを伺っています。公害病を持つお母さんが、子どもに別の所に住もうかということを話したら、子どもが「ここは故郷」と言ったので、お母さんも公害病を抱えながら、その場所を離れずにそこで生きていくことを決心しました。大事なことは地域を再生していけるような気持ちを繋げていくこと、これがESDらしさです。
<河野恵子さん:河川環境楽園・自然発見館 指導員>
全国に点在するフィールドに、環境教育スタッフを派遣し、地域調査などのソフト提供や木曽川水公園でのエコツアーを実施しています。また、木曽三川親子サミットを開催し、流域の生物多様性と自然がもたらす恵みの話、川の恵みを育む地域の取組についての話をし、地域の川への関心を親子で高めていく事業をしました。
*自然と文化、生き物のつながり
私たちのNPOはいきもの屋さん。自然と人との関わりについて体験を通して伝えています。体験をして終わりではなく、私たちにできることへの共感に繋げていけるようにやっています。身近な生き物と文化は繋がる、それを伝えることがESDらしさです。
<駒宮博男さん:NPO法人地域の未来・志援センター 副理事長>
トヨタ自動車のお金で、南北問題をどう解決するかという活動を行っています。トヨタには企業の森が三つあり、これらの森を使ってこれからの新しいライフスタイルとして、稼ぎ、地域、暮らしのことを入れた地域コミュニティを作る活動も行い、その活動を通して人材育成を行っています。
*価値観を変える
環境・社会・経済は対立・並立するものではなく、経済を内側にして、社会、そして環境が取り巻くという風に考えないと持続可能な社会はできません。今、人間が生物として生きるためにはどうしたらいいのか、地域の自然を徹底的に使いこなす必要がある、その視点がESDらしいと思います。地域の風土・生物多様性に根ざした社会をつくるためには自治しかない。地域の人たちが決定権を持てるようなガバナンスが大事で、そのための教育が必要です。
<小森耕太さん:山村塾 事務局長>
小学校の古い校舎を使った合宿型のプログラムや、地域の農家と農作業を行う活動をしています。これには多様な世代が参加しており、受け入れる農家も多様な世代で、様々な世代が交じりあっているところが良い点です。
*異世代・異文化
子どもに体験をさせたいということで参加する父親が、最後は父親が夢中になっていることも多々あります。また、子どもを自分がみなくても、地域の人たちがみてくれるという繋がりができていきます。さらに、農山村という場所は都会から来た人たちにとって、異文化。ここには、海外の人たちも来て、異なる考え方を持つ人たちが一緒にご飯を食べ、自分自身を見つめ直していきます。このような世代や文化を越えた交流がESDらしさです。
<内藤元久さん:岡山市環境局 統括審議監>
環境、子育て、食育等多様な活動を地域と行政が連携しあい進めています。岡山の活動の魅力は、多彩なプレーヤーの多彩な取り組みです。地域にあるESD的な要素を深めるために地域で繋がり、深める支援をESD推進協議会が行っている。岡山市では全ての公民館をESD活動の柱にし、職員研修も行っています。大学も関わり、市民の活動を支えています。
*交流と連携の広がり
普通の子育てサークルをしている人たちが、ESDを知り、国際理解や環境教育を進めたりしています。ESDという視点から、それぞれの活動が深まりを見せているのが岡山の特徴でもありESDらしさでもあります。
<コーディネーター 杦本育生さん>
トリプルボトムラインの「社会・環境・経済」の『社会』とは何でしょうか。ヨーロッパでは、社会とは人権や福祉だけではなく、地域の特性である、と言います。地域のことをよく知ることが大事なポイントです。持続可能な開発をするうえで必要なことは、環境・社会・経済がうまく絡み合いながら、人との繋がりあい、継続する、ということだと思います。人にどう関わっていくのか、教育がどうかかわっていくのか、ということが今、私たちに問われています。2014年が第二のスタートになって、大きく変化していかなければなりません。
第二部 分科会「『ESD』で魅力や強みをプラスしよう」
<第1分科会:学校をベースとしたESD>
- ファシリテーター:佐々木雅一さん
- ゲスト:白幡勝美さん、辻幸二郎さん
- 進行:この分科会では学校におけるESDについて、ゲスト2名と参加者13名の計15名がファシリテーターのもとで話し合いました。学校現場でのESDは綺麗ごとだけでは進みません。しかし、ESDのアプローチは地域の中だけではなく、子どもたちの育ちの中でも重要です。そこで、学校でESDを進めていく上での強みや弱み、困難や課題等を出し合い、どのようにしていけば学校でのESDの取り組みが良くなるのか、というヒントや知恵をゲストを含めた全員で共有しました。
- 強み:関心の有無に関わらず子どもを含め広範囲に伝えられること。
- 弱み:学校内での興味の温度差や理解の差により前に進みづらいこと。
先生たちの人事異動が多く継続性が保たれにくいこと。
地域の人との連携が難しいこと。
学校内の理解を進めるために
- 私たちが活動を進める上で忘れてはならないのが、目の前にいる子どもたちを第一に考えること。子どもたちに伝えるべきことは何か、また、子どもたちに求められることを汲み取ることも私たち大人の使命。
- 今のように思うようにならない社会を生きていく上で、人と交わる力や事実を見る力、働きかける力などを育むESDは必須の教育。そこをどう共有できるか。
- 教員と一般の人の距離を縮めることが大事。教員と地域の人たちが気楽に話しあえる関係ができると地域の要望が入ってくるため、やるべきことが見えやすくなる。(教員は学力向上を求められていると考えているが、地域の人々はもっと広い視野で、ひきこもりを心配し、社会といい関係が持てる大人に育ってほしいと考えている)
本当の意識の変化、行動の変化につながる工夫
- 子どもたちが学習の中で工夫の楽しさを学ぶこと。それが出来れば、さらに意欲が出る。
そこを教員がどういう指導の方法で工夫させるかが鍵。 - 子どもたちの活動が循環型社会に繋がっていることを目に見えて実感させることも大切。
自分の行動がこの社会と結び付いていることが理解できれば、次の行動にも繋がる。 - 活動後は体験だけで終わらせず、振り返りの時間をじっくりとることが大切。
- 他者に伝えることも重要。(異学年伝達は非常に効果的)
- 子どもたちや地域の人、PTAなど、誰もが共有しやすいテーマを選び、学校の先生がコーディネーター的な働きで参加を促し、さりげなくESDに繋がる視点を持たせるような活動をするとよい。
ESDを継続して行うために
- ESDを学校に根付かせるためにはカリキュラム化、または行事化することが有効。
- 地域との連携を定着させることで、人が替わっても周りにノウハウが残るようになる。
- さりげなさは継続するためにも必要。
- 本当にこの社会が必要としているものであれば伝わっていくので進めていくべきである。
<第2分科会:地域をベースとしたESD>
- ファシリテーター:野口扶美子さん
- ゲスト:小森耕太さん、河野慶子さん、駒宮博男さん
- 進行:地域をベースとした分科会は、ゲスト3名、参加者15名の計18名がファシリテーターのもとで話し合いました。初めに、ゲストからそれぞれの活動を通して感じたことが語られました。その中で「ESDとは何か」というところから、どのように地域においてESDを広めていくのか、地域活動の担い手や持続可能な雇用をどう作っていくのか、ということが課題に挙げられました。そして3者に共通するキーワード「各地域にある知恵をどう伝えていくのか」を意識しつつ、参加者も含めて全体で意見を出し合いました。
地域の活動をどう進めていくか
- 今の日本は外圧に弱く、地域は思考停止状態。なんでも上から言われないと動けないという状況を変える必要がある。
- 様々なセクターとの繋がりをつくっていくべき。
- 地域の知恵を持つ方たちが高齢者のため、後10年もすればその知恵は消えてしまう。
- 私たち一人一人ができることとして、まず無関心を共感に、そして自分の意見をもつ、 に変えていくことが必要。
- 地域のESDの取組みをもっと発展させるためには、稼ぎや生業を繋げていくことが大事。
つまり、地域の持続可能性には雇用が不可欠。
ESDの限界
- 環境教育は即効性が無く、なかなか目に見えた効果がすぐに感じられないものなので、後回しにされがち。「ESDの限界を感じている」
- 現在の縦割り行政の問題をどうしていくのか、ということが課題。
- 壁を乗り越えるために、問題に向き合うためにはどのようなアプローチが良いのか?
地域と子ども
- この分科会で最も多く出てきたキーワードが、未来を担う「子どもたち」。しかし、今の子どもたちは家の中に閉じこもりがちで、地域に出ていかない。子どもの親が変わることが大切で、親が子どもを地域に出してあげることで関係をつくっていくことが必要。
- 子育てを始めた親は必要性を感じ、地域に目を向け始める。親にだけ、子どもにだけ、ではなく家族に対するアプローチが必要。まずは家族を変えていく。そして、家族を取り巻く地域を考えていくことが社会の持続可能性に繋がるのではないか。
- 議論が白熱して時間が足りなかったため、まとめは最後の全体会に持ち越されたが、地域は基盤であり、それをこれから担っていく子どもたちを育てていく重要性をそれぞれが認識した。
<第3分科会:ESDを支援する取り組み>
- ファシリテーター:森容子さん
- ゲスト:内藤元久さん
- 進行:この分科会では、「どのようにすればESDが広まるか」ということをテーマに据え、ESDの促進となるもの、阻害となるものについて、ゲスト1名と参加者12名の計13名がファシリテーターのもと話し合いました。話し合いは地域や学校におけるESDだけではなく、より広い場をベースとしたESD をどのように支援していくのかについて、また、それらの場において、ESDを促進するものや障害となるものに関して各々の考えを共有しました。
「ESD」をわかりやすく
- 現在、持続可能な開発(SD)やそのSDを理解するための教材、そしてESD的な活動は多くあるが、それらはわかりにくいもの、理解が難しいものが多く、この事が社会全体の理解度の低さに繋がっているのではないか。
- そもそも「ESD」という言葉自体が特殊なものであり、遠くのもののように感じられてしまう。
- こうした要因が参加したくても行動に移せないというような人々を増やしており、その解決の為には、何でもないような身近なことから誰もが始められるように、地域のプラットフォームを増やしていくべき。
組織・システムから見るESD
- ESDを広めるには、やはり組織や団体の活動のような大きな力が必要。教育委員会はESD推進における重要な組織であり、そうした組織へのESDの働きかけをより考えなければならない。
- 一方、例えば行政などでは人事異動による組織力の低下、縦割りの問題、資金不足など、システムにおける問題も存在する。
- ESDを推進する組織には「リーダーシップ」や「(政治的)イニシアチブ」が重要。これらこそが縦横の連携・コミュニケーションを構築・強化するものであり、トップダウンの働きかけをより強固にし得る。
- 今の日本には具体的なサステナブルビジョンが無く、世界のレベルに達していないのではないか。
- 現場の意識の重要性を周知し、自分たちでやらなければならないという意識の向上が必要。
まとめとして
- 国民全体の共有するビジョンの中にSDが入っていないことが問題。
- その結果、政治にも影響が出ているのが現状であり、上下相互の働きかけが必要。
- こうした問題の解決には、地域「岡山モデル」や「気仙沼モデル」というような地域のESDモデルを活用し、ESDを広めていき、そして具体的なビジョンを政府も持つべき。
第三部 全体会(各分科会の報告)「『ESD』の魅力や強みを確認しよう」
各分科会で話し合われた、ESDの魅力や課題、ESDを進めていくために必要なアクションなどを、ファシリテーターがそれぞれ3~4のキーワードに整理し、発表しました。
<学校をベースとしたESD>
【1. 理解】
理解を得るためには、多くの人が共感を得られる、また共有しやすいテーマを選ぶ必要があります。そして、教員が地域の人と話す機会を増やすことによって気づきが生まれる場ができます。
【2. 継続性】
活動を継続させていくためには、すでにある活動にさりげなくESDの視点を加えること、また校内の組織化、学校の教育計画にESDを加えていくことが必要です。
【3. 地域との連携】
情報が得られるような地域との仕組み作りをし、先生たちに地域の情報や支援の情報をとどける必要があります。さらに子どもたちの価値観を変えるために 自尊感情をしっかり高めるためのプロセスデザインを考え、自ら課題を見つけ探求する学習や工夫の楽しさを感じてもらうことが大切です。
【4. 目の前の子どもとしっかり向き合う】
それは、未来を考えることに繋がります。目の前の子どもたちは何を必要としているのか、これをしっかり考えることで必然的にESDが生まれ、深まります。まずは目の前の子どもたちを大切にすることから始めなくてはいけません。
<地域をベースとしたESD>
【1. 地域は基盤】
地域で行うESDの難しさは一体何がESDなのかがわかりにくいことです。そのような中でも、失われようとしている歴史や文化を持つ人たちの知恵をどう伝えていくのかが鍵となります。
【2. 子ども】
子どもをターゲットにすることで、取り巻く家族が活動に関わって豊かになっていくという意見が出ました。未来を担うのはいつでも子どもたち、その子どもたちの声を行政に届けていくことが大切です。ただ今は地域の基盤がないために子どもたちが外に出ていけないのではという懸念の声が上がりました。
【3. 限界】
地域の農業で生計を立てていけないため、都市と結ぶことによってそれを補うことができるのか、ということやESDは環境だけでなく福祉や人権等様々な所と関わりがあるのにもかかわらず、縦割りの構造が阻害する、というような問題点が挙げられました。また、自然体験の乏しい人が非常に増えているが、彼らは一過性の体験で学べるのかというような「限界」についての議論が起こりました。これに対し、ESDはどう向き合い切りこんでいけるのかが、これからの課題となります。
<ESDを支援する取り組み>
【1. ESDはより良い社会を創るツール】
今回のフォーラムで悩みや課題が共有でき、ESDはより良い社会を創るツールであることが認識されました。その認識の下、そのツールを活かした活動の枠組みに関することや、どのようにESDを支援していくのかを話し合いました。
【2. ESDは新たな社会のヴィジョン作りの決め手】
しかし、それを阻害するものは、教員や行政の認知度が低いことと、理解している人材の不足です。広く社会に浸透させるためには上からだけでなくボトムアップも必要となります。
【3. ESD活動を支援するにはわかりやすくする、強いリーダーシップ】
やはり、ESDという言葉自体がわかりづらく、特殊なものにしていると考えられます。様々な人が理解できアプローチしやすいようにハードルを下げることや、例えばESD大臣のようなポストをつくり、強いリーダーシップをとる人材が重要となります。
<まとめとして>
たくさんの実践を行い、より深め、互いに学びあうことが大切なのではないかと思います。そのような関係、地域を増やしていければよいのではないでしょうか。私たちはこれから、ESD実践が社会の持続可能性に繋がっていくよう、しっかり見ていく必要があります。そして一緒に変わっていく場を作ることがとても重要です。子どもも大人も共に変わっていけるように。ESDを通して、変わらない大人を引っ張り込み巻き込んで、社会全体で持続可能な社会創りを目指していきましょう。
- 2010年度(準備中)


